モンスター

Category : 映画・DVD・ビデオ(ジャンル別) > サスペンス・ミステリー・スリラー

モンスター プレミアム・エディション
原題 MONSTER
2003年 アメリカ・ドイツ公開
上映時間 109分
監督 パティ・ジェンキンス
出演 シャーリーズ・セロン/クリスティーナ・リッチ

お勧め度 ★4つ半

アメリカの連続殺人犯、アイリーン・ウォーノスを描いた実話。彼女を実際に登場させてのドキュメンタリーみたいなDVDもあるけれど、アイリーンは結局最後は死刑になる。そんな女の話だ。

シャーリーズ・セロンってかなりの美人だと思っていたのが、この映画では13キロ太って外見をものすごく変えて、アイリーンに近づけようとしているのが、結構話題になっている。人ってこんなに変わるもんなんだと驚いた。美人の面影全くなしだもん。そこまでした体当たり演技で、アカデミー賞の主演女優賞をとっている。

実際のアイリーンにホントよく似ているんだよね、すごいよーあそこまで変貌するって。それはいいとして、タイトルのモンスターってアイリーンのことを言ってるんだけど、私にはセルビーの方がモンスターだと思った。あの女に出会わなければ、もしかしたらアイリーンは殺人なんておこさなかったかもしれないと思ったりもした。

私の中でもっとも嫌いな女がセルビー。寄生虫のようだよ。セルビーはレズビアンなんだ。酒場で娼婦をしていたアイリーンに出会うんだけど、アイリーンはレズビアンでも何でもないんだ。だけど今までの過酷な人生の中で、唯一自分のことを愛してくれた人間がセルビーと思ったら、セルビーのためにすべてを投げ出してしまったんだよね。

セルビーは本能的に、自分を絶対無二の存在として扱ってくれると感じ取って、アイリーンに近づいたとしか思えない。もちろん計算してとは思わないけれど、しれっと「私を養って」と言ったあの顔は、忘れられないよ。だってもしもアイリーンを愛していたとしたら、あの言葉の裏は、自分を養うために売春を続けろっていう事なんだよ。そんなこと愛している人間に言える?つまり金に困らないように稼いでくれと、そのために自分は家族を捨ててあなたについてきたという事を強調して。お金がなくなると、「パーティもできやしない」とか言っちゃうんだよ。

いくら今手を怪我しているから仕事ができないといって、お前も働けよと思った。セルビーは働いて二人で生きていこうなんて気持ちはさらさらない。アイリーンがセルビーのために売春で稼いだ金を、いとも簡単に使って遊んで、アイリーンの愛を利用して、最後はアイリーンを売るんだ。もちろんアイリーンは殺人を繰り返しているので、それは裁かれなくてはいけないと思う。セルビーがアイリーンが犯人と言ったとしても責められないとは思う。だけどもセルビーの根性が気に入らない。あいつは人に幸せにしてもらおうとばかり考えて、最後は被害者ヅラするのがねぇ。無邪気さは一番罪作りだと思うんだけど。

決して明るく楽しい映画ではない。連続殺人犯の心の闇が、淡々と語られている。別に同情してくれとか、お涙頂戴でもない。ただ見る人にゆだねられているだけ。救いのない終わり方だし、胸が痛くなるラストでもある。でも私は見る価値大いにあると思う。もしかしたら自分の中にも、こういう危うい部分がないとはいえないのかもしれない。それは誰にもわからない。

【STORY】
1986年のフロリダで、ヒッチハイクをしながら売春で生計を立てていたアイリーン。そんな生活に疲れ果て、有り金の5ドルを使って自殺しようと思っていた。最後に飛び込んだ酒場で、一人の女性セルビーと出会う。セルビーは同性愛であり、社会から特異な目で見られ続け、疎外感を感じて生きていた。そんな彼女に、初めて自分を偏見なく受け入れてくれる人間と感じたアイリーンは、セルビーと一緒に暮らしたいと提案する。しかしそのためにお金が必要で、彼女は再び客を取るため道路に立つことになる。

ここから先は完全ネタバレ注意、よろしければどうぞ
アイリーンが最初の殺人を犯したのは、もしかしたら正当防衛と言える部分もあると思うんだ。いくら娼婦だといっても、あんな暴力を受けたら死んじゃうよ。暴力をうけて、相手を銃で撃ち殺してしまうんだ。それもセルビーを迎えに行くために、手っ取り早く売春してお金を稼いで、セルビーのところに行こうとしたら、相手の男に殺されかけるような暴力を受ける。セルビーに会うためにも、死ぬわけにはいかないと相手を撃ち殺す。ここから転落が始まるんだよ。

彼女の生い立ちは実際でもひどいもので、だからといって殺人を肯定することはできない。だけどなー、一番最初に殺された男だってそうとうひどいよ。殺されてもしかたないんじゃないかっていう位のことまでしてるんだもん。だからといって殺していいとは思わないよ。

そのあとは彼女も何かネジがとれてしまったようになるんだ。売春目的で車に乗り込んで、先にお金を貰い、ことに及ぼうとした瞬間、相手を撃ち殺してお金と車だけを奪ってという強奪を繰り返すんだ。

多分もう売春は嫌になっているんだと思うんだよね。だけど別の仕事に就こうしていても仕事はない。無知だから履歴書も持たないで面接に行ったりして、それでことごとく落ちる。なので仕方なく道に立ち男に声をかける。そしで殺してしまう。でもなー、最後の殺人は、あのおじさんいいやつだったのに、決して売春目的でなく、優しさで自分の家に泊まればいいなんて言ってくれてさ、妻も子供も了解してくれるよなんて。あんないい人を殺さなくてはならないほど、壊れてしまったんだなぁ。それもセルビーの愛のために。

実際のアイリーンは死刑を望んだらしい。セルビーの裏切りを知って。でもそのセルビーを最後まで信じたいと思っていたみたいだ。裏切られたと知ってもなお、彼女をかばっていたらしい。この映画はアイリーンに同情をしてという事はないよ。淡々と語っているだけ。やはり何人も人の命を奪っていいという事はないからね。だけど彼女が転落しない道はやはりなかったのかなぁと、いろいろ思うところはある。
Date : Friday 28th October 2005 14:33
author : なん :: comments (2) :: trackbacks (1)

comments

kana | Fri 28/10/2005 16:14
これ観ましたよ〜。
シャーリーズ・セロンの演技素晴らしかったですね。
重い映画でしたが・・・。
観ている間、まるで自分が経験しているような錯覚に陥り、驚愕でした。思い出すだけでも恐ろしいです。
何がアイリーンをここまで追いつめたのか。彼女が救われる道はなかったのか、と考えてしまいます。

アイリーンに同情する人がいたので、この映画が作られたんでしょうね。
なん | Fri 28/10/2005 16:29
おお、kanaさんもこの映画見ていましたか?なんとも言えない映画でしたね。アイリーンのセルビーに入れあげてしまう、あの気持ちは、愛を求めて求めて、もう離したくないと思ってしまったんでしょうね。はじめて手にした愛だと錯覚してしまったのだとも思うし。人間って執着してしまうものだしね。なかなか感慨深いものがありました。

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ヂスカスの森 | Thu 22/12/2005 20:51
『モンスター』
 2003年 アメリカ/ドイツ 109分 クライム・スリラー 監督 パティ・ジェンキンス 出演 シャーリーズ・セロン     クリスティーナ・リッチ          評価★★☆(2.5) ネタバレ注意 しかしスッゲー汚れ役だ...
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