インサイダー

Category : 映画・DVD・ビデオ(ジャンル別) > 社会派ドラマ

インサイダー
原題 The Insider 
1999年 アメリカ公開
上映時間 158分
監督 マイケル・マン
出演 アル・パチーノ/ラッセル・クロウ

お勧め度 ★5つ

アメリカのたばこ産業を相手に戦った、実話だそうです。まあアメリカでは、マクドナルドのバーガーを食べて太ったから、それはマックのせいだとか、たばこを吸ったから肺がんになったっていって、裁判が起こる国です。さらにこの映画実話なんだけど、実名まで出してます。フィリップモーリスが出てきたり、米国の大手タバコ会社B&W (Brown & Willliamson) Tobaccoとか。

内部告発の難しさ、またそれを世間に公表するための難しさ、そんなものが実によく現れています。マスコミでさえも、上からの圧力に屈したりするわけですよ。この映画結構長いです。二時間半くらいあるんですが、時間の長さを感じずに、あっという間に見れました。面白い。私はドキュメンタリーとか、実話とかっていうものがかなり好きみたいです。

【STORY】
CBSの人気報道番組のプロデューサーが、内部告発者とともに、タバコ産業の不正を告発する。

ここから先は完全ネタバレ注意、よろしければどうぞ
昔は健康産業で製薬会社などで働いていたワイガンドは、破格の給料を約束されて、タバコ産業に転職した科学者なんだよ。それがある日突然解雇を言い渡されるの、その解雇理由が「コミュニケーション能力が少ない」とかなんとかいう、実にへんてこな理由で。まあ社長の意見と対立したための、やっかいばらいみたいなもんなんだよ。
娘は喘息があって、医療費がかかるので、医療保険がないとたいそう困る。そこで会社は多額の退職金と医療保険をえさに、今後社内で知りえた情報はいっさい公開しないという守秘義務の契約を迫るの。それにサインしたら退職金と医療保険はやるよというもの。

一方バーグマンはCBSの番組『60ミニッツ』でのプロデューサー。フィリップモーリスの極秘資料を入手して、ここに書かれていることを検証できる人物を探していた。それがワイガンドなんだ。

それからタバコ会社のワイガンドにたいする嫌がらせが始まるのだ。つまりワイガンドにタバコは害があるって言われたら困るのだよね。会社は「タバコは害がない」といい続けていたので、害があるって言う科学者の証言は、偽証したことになるので、絶対に言って欲しくないわけだ。だから守秘義務を強要しているわけだし。

この映画はいろんなことを訴えていると思う。例えば自分が不当な理由で解雇されたら、最後まで戦えるか?私にはそんな根性はないかもしれない。そして退職金と医療保険というものを捨てても守るべき正義があるのかと問われたら、家庭を持っているワイガンドは、正義を捨てても責められないと思うのだ。

事実本当のことをしゃべるよっていう気持ちになった時には、妻も子供もワイガンドから離れていってしまった。夫が内部告発することで、家族が危険に脅かされる毎日に、妻も子供も我慢できなくなっていくのだ。この気持ちもわからないでもない。妻は家庭や子供を守りたいと思う。それなのにって…。

ラッセル・クロウが実にワイガンドの役をうまく演じている。彼の心の葛藤なんてものすごくよくわかるんだよ。正義は誰しも持っているものだけど、それを振りかざすだけの勇気があるのか、そしてそれに引き換えに失うものは、彼の苦悩がとても心をかき乱す。

それでもワイガンドはタバコは害があるという事を世間で証言することになる、バーグマンの番組で話すことになるのだ。だけどマスコミも圧力がかかり番組を放映できない事態になる。ワイガンドが何もかも失って話した言葉は、番組で放映されなければ何の意味もないものになってしまう。
バーグマンも負けてはいないんだよ。番組関係者は、圧力に屈するの。それもよくわかるんだよ、今までの地位や名誉を簡単には捨てられない、クビにはなりたくない。誰でも思うと思うのだ。だけどバーグマンだけは負けないんだ。何が何でも放映するために、せっかく自分を信じて内部告発をしてくれた、ワイガンドに報いるために。ありとあらゆる人脈を使って。世間に知らしめる努力をする。

すごいよ、ホント涙が出てきたんだよ。別にお涙頂戴の映画ではないはずなんだけど、彼らの正義感に涙が止まらなくなった。企業相手だよ、個人がどこまで戦えるか、つぶされるのがオチだよ。だけど自分の信念の元、人間としての正義とは、それを貫く意志の固さ、そんなものが実に心を揺さぶる。
私は仕事をしていて、ここまで一人で戦えるだろうか?戦えないと思う。そんな自分の弱さをよく自覚している。だからこそこの映画は私の心にガツンときた。人質が家族の未来なんだよ。それを失うんだ。怖いよ逃げたいよ、でも彼は言うんだ「別れた娘たちに、自分がしていることを正しいとわかってもらうために、番組を放映して欲しかった」って。ワイガンドは弱い人間なんだよ、情けない部分もたくさんある、だけどそんな人間が信念を貫いて、巨大企業を相手に戦う姿は、感動を与える。

これは男の映画ですね。かっこいいよ。最後はワイガンドの告発もちゃんと世間に知らしめることもできて、彼自身も新しい教師という職業で生きていくことができて、ハッピーエンドなんだよ。一方のバーグマンはCBSを退社するんだ。あっさりと。その言い分としては、自分はネタの提供者には、自分を信じろといい続けてきた。でも今回のことで多分信じろっていうことになった。そんなことでは誰も真実を語る勇気は持てないって。そして「一度失った信用は、回復できない」って言って去ってゆくの。
あーなんて潔いんだ。アル・パチーノの演技もすごいんだなぁ。

ラッセル・クロウとアル・パチーノ、この二人の演技見るだけでも、価値は十分あるくらいいい映画だと思う。
Date : Saturday 23rd July 2005 14:26
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